野球のユニホームは体に密着していないためあまり目立ちませんが、実は筋骨隆々の選手が多いのが最近のトレンドです。
昔は筋肉は練習を通じて付いていくものという考え方が主流だったため、器具を使ったトレーニングには否定的で、せいぜい腕立て伏せ、腹筋、背筋などの基礎トレーニングをする程度でした。
しかし、今ではいかに効率的に必要な筋肉を付けるか、そのためにウエートトレーニングは必要不可欠という考え方が主流です。
野球に筋トレが大切な理由
まず何よりもパフォーマンスの向上に筋肉は必要です。速く走る、遠くへ投げる、強く打つ。
あらゆるプレーには必要な筋肉があります。普段の練習で鍛えられる部分ももちろんありますが、それらをビルドアップすることでより効率的に効果を発揮することができます。
さらにケガの防止にもつながります。野球のプレーには、私生活ではありえない動きがたくさんあります。
格闘技のように直接的に攻撃される訳ではない割に、ケガの多いスポーツと言えるでしょう。投手が肩や肘を痛めて野球を断念するのは、その最たる例です。
無理のないフォームを体に覚えさせることももちろんですが、故障しないためにも筋トレが必要になります。
筋トレが好きな野球選手達
まず先駆者とも言えるのが、現阪神監督の金本知憲です。広島にドラフト4位で入団した頃は細身の外野手で目立った存在ではなく、パワー不足を実感したといいます。
そこから本格的にウエートトレーニングを導入し、体脂肪はそのままで体重が10kg増加。
33歳頃が最も速く走ることができたそうです。後に連続フルイニング出場の世界記録を樹立し、“鉄人”と呼ばれるようになったのは、紛れもなく筋トレの賜物でした。
また、日本プロ野球史上初めて50歳まで現役を続けた山本昌も早くから筋トレを導入していました。
毎年オフには鳥取にあるトレーニング施設「ワールドウィング」に通い、小山裕史代表の提唱する初動負荷理論を実践。頑丈な肉体をつくり上げ、通算219勝を挙げる大投手となりました。
最近はウエートトレーニングをする選手は枚挙に暇がありませんが、有名どころでは大谷翔平でしょう。
日本ハムの先輩、ダルビッシュのアドバイスもあり、1日7食を摂りながら着実に筋肉量を増加。体重は100kgを超え、世界に誇る二刀流ボディが完成しました。
球速アップのための筋トレメニュー
では、それぞれのプレーには、どのような筋トレが効果的なのでしょうか。
まず球速アップのためには、上半身は広背筋、下半身はハムストリングスを鍛えることが重要です。それらを同時に鍛えられる筋トレがデッドリフト。
当然ながらボールは腕力だけで投げる訳ではありません。下半身の力をスムーズに上半身に伝えることが必須です。スクワットで内転筋を鍛えることも肝要です。
さらにダンベルを利用して上腕三頭筋を鍛えましょう。右利きの場合、右手の親指と人差し指でダンベルの取っ手部分を挟んで持ち、バンザイのように上げます。
左手で右肘を抑え、動かないように固定しながら背中側にゆっくり曲げ、再びバンザイに戻る動きを繰り返します。この時、右肘に負担がかかりすぎないように左手で丁寧に支えることを忘れないでください。
スイングスピードを上げるためのメニュー
何よりも大切なのは素振りです。
フォーム論はここでは省きますが、重いバットで素振りを続けていれば、次第に筋力が付き、試合用バットを握った時にとても軽く感じます。スイングスピードは自然と上がっているはずです。
さらに重要なのは、やはり下半身と上半身のバランスです。腕力だけでバットを振り回しても結果は出ません。スクワットや体幹トレーニングで腹筋、背筋を鍛えることも重要です。
肩を強くする筋トレ
イチローのレーザービームに代表されるように、強肩外野手がバックホームでランナーの生還を阻止するシーンは野球の醍醐味のひとつです。
では強肩になるにはどうすればいいのでしょうか。まず肩のインナーマッスルを鍛える必要があります。テレビなどで観たことがある方も多いかと思いますが、右利きの場合、ゴムチューブを左側の柱に結び、右手で握ります。
右肘は右脇腹に付けたまま、チューブを握る右手を90度右側に引っ張ります。これを繰り返すことでインナーマッスルだけでなく、肩の可動域が広くなり、ケガをしにくくなります。
また、肩だけではなく、三角筋、上腕二頭筋、広背筋、そして手首の筋肉も必要です。ダンベルを持って、上腕から肘は動かさずに手首の力だけで上下動させるだけでも手首を鍛えられます。
野球のための下半身の筋トレ
まず何よりも走り込み。
地味ですが、下半身を鍛える王道です。ダッシュや長距離走は筋力だけでなく、持久力、瞬発力、精神力など全てに通じるトレーニングですので、毎日必ず行ってください。
さらに、その上でスクワットをすれば効果的です。相撲の四股も下半身を鍛え、股関節を柔らかくする意味で理に適ったトレーニングです。ウォーキングラウンジと呼ばれる、
大股で足を踏み出し、膝が直角になるまで腰を落とすトレーニングも続けましょう。
雨の日や部活の後にもできる自宅筋トレ
自宅など器具がない環境でも鍛えることは可能です。腕立て伏せや腹筋、背筋、スクワットなどは毎日行いましょう。
ビール瓶に砂を入れてダンベル代わりにすれば、様々なトレーニングに活用できます。
バランスボールは通信販売で入手可能なので、より効率的に体幹を鍛えるために購入してもよいでしょう。
まとめ
野球は数あるスポーツの中でも、技術面の占めるウエートが高い競技です。しかし、その技術力を活かすためには筋力が必要なのも確かです。
今夏の全国高校野球選手権大会では史上最多の64本塁打が飛び出し、話題となりました。
あの甲子園が狭く感じられるほど、高校生の打球の飛距離が伸びているのも、筋トレを導入している学校が多いからでしょう。
これからは野球選手もアスリートとしての意識が重要になることは間違いありません。
より正しい知識を吸収し、より効果的に筋トレを行うことが求められます。
【関連記事】